

私、就活でも面接でも“あなたの強みは何ですか?”って聞かれるのが一番苦手なんです。何も思いつかなくて…。他の人みたいにアピールできるものもない気がして…



そうだったんだね。強みって、自分にとっては“当たり前すぎて気づけない”ことが多いから、実は“ない”んじゃなくて“見えてない”だけのことも多いんだよ。脳の仕組み上も、それは自然なことなんだ



そうなんですか…? なんか、ちょっとホッとしました



うん。じゃあ、なんで“強みが見えなくなるのか”を脳や心理の面から一緒にひも解いていこうか
当たり前すぎて見えない?



たとえば…友達から“気が利くね”って言われても、自分では普通のことだからピンとこないんです



それ、まさに“強み”が見えにくくなる典型的なパターンだよ! 脳って“慣れたもの”をスルーする働きがあるんだ。だから、自分が自然にやってることは『これは強みじゃない』って思い込んじゃうの



えー…そんな仕組みがあるんですね



そうそう、“当たり前の中にある強み”を見つけるには、ちょっと視点を変える必要があるんだよ
科学的な解説
「自分の強みが分からない」という感覚には、“脳の慣れ(順化)”という仕組みが大きく関係しています。私たちの脳は、日常的に繰り返していることや慣れてしまった情報を「重要じゃない」と判断して、わざと意識に上げないようにします。これは「選択的注意(Selective Attention)」と呼ばれる心理的なフィルター機能の一部で、脳のエネルギーを節約するために起こるものです。
そのため、自分が自然とできてしまう行動や思考は、「他の人よりすごいこと」なのに、本人にとっては「普通のこと」「特に意識しなくてもできること」になるんです。結果として、「これは強みじゃない」「みんなも同じようにできる」と思い込んでしまい、本当の強みに気づけなくなるのです。
また、**スキーマ(認知の枠組み)**によって、「強み=特別な才能や実績」と定義してしまうと、自分の中の“日常的な良さ”が強みとして認識されにくくなります。特に真面目な人ほど「これくらいで強みって言っていいの?」と自分に厳しくなりすぎてしまいます。
繰り返し接すると、反応しなくなる脳の仕組み。自分の習慣や当たり前に慣れすぎて、それを強みと認識しなくなる。
・人に親切にできる人ほど「こんなの誰でもやってる」と思いがち
・空気を読むのがうまい人ほど「気を使いすぎて疲れる」と思っている
・事務作業が得意な人が「自分は普通のことしかできない」と感じてしまう
・脳は「慣れた情報=重要じゃない」と処理してしまう
・自分の強みは“当たり前の行動”の中に隠れている
・「強み=特別なこと」という思い込みが、気づきを妨げている
他人との比較で自信が消える?



SNSとかで、同い年くらいの人がすごい成果を出してたりすると、“私は何もないな…”って落ち込むんです



その気持ち、すごくわかるよ。他人の“見せたい部分”ばかり見てると、自分が劣ってるように感じちゃうよね。でもそれって“比較する脳のクセ”の影響なんだ



脳のクセ…?



うん。脳って“自分より上の人”ばかりに目がいく仕組みがあるんだ。だから自分の強みがかすんで見えちゃうんだよ
科学的な解説
「自分の強みが分からない」と感じてしまう背景には、“社会的比較理論(Social Comparison Theory)”という心理の働きがあります。これは、人は自分の価値や能力を判断する時に、他人と比較することでそれを測ろうとする傾向があるという理論です。特にSNSなどの情報があふれる現代では、自分より“できている”ように見える他者ばかりが目に入るため、無意識に「自分には大したものがない」と思い込んでしまうのです。
さらに、脳の「扁桃体(へんとうたい)」という部位は、ネガティブな刺激に敏感に反応します。他人と比べて「自分のほうが劣っている」と感じると、この扁桃体が活性化して、自己否定感が強まってしまいます。そしてその状態では、「自分のいいところ」を冷静に探す前に、「ない」「ダメだ」というフィルターが先に働くようになります。
また、ドーパミン報酬系の観点でも、他人の評価に基づいた比較や承認欲求に依存しすぎると、「外からの評価がないと自分を認められない」状態になりやすく、自分の中にある小さな強みや成果を感じにくくなります。
人が自分の価値や能力を判断する際、他人との比較によって行う傾向。特に「上方向の比較(自分よりすごい人)」は劣等感を生みやすい。
・他人の「資格取得報告」や「仕事での成功」を見て「自分は何もない」と感じる
・褒められても「でもあの子の方がもっとすごいし」と思ってしまう
・過去の自分より成長していても、周りと比べると価値がないと思ってしまう
・人は無意識に他人と比べて自分を評価しようとする
・比較の対象が「自分よりすごい人」ばかりになると、自分の強みが見えなくなる
・自己評価は、他人基準ではなく“過去の自分との比較”で見る視点が大切
失敗が強みの芽をつぶす?



前に挑戦したことがうまくいかなくて…。あれから“私は向いてない”って思うようになっちゃいました



それ、すごくもったいないよ。その時うまくいかなかったのは、“強みがない”からじゃなくて、“強みの使い方がハマらなかっただけ”ってこともあるんだ



でも失敗した記憶のほうが強く残っちゃって、自信なくなるんです



実はそれ、脳の“ネガティビティ・バイアス”って働きのせいでもあるんだ。悪い記憶ほど強く残るから、強みより“できなかったこと”ばかり思い出しちゃうんだよ
科学的な解説
「強みがない」と感じる背景には、“過去の失敗体験”が色濃く影響しているケースがよくあります。この時、脳で働いているのが「ネガティビティ・バイアス(Negativity Bias)」という性質です。これは、ポジティブな情報よりもネガティブな情報のほうを強く記憶し、優先的に意識する脳の傾向のことです。これは人類が進化の過程で「危険から身を守る」ために発達させた大切な能力でもあります。
例えば、過去にチャレンジしてうまくいかなかった経験があると、「自分は向いていない」と脳が学習してしまいます。そして似たような状況に対して、「また失敗するかも」という予測を強化し、無意識に自分の能力や可能性を狭めてしまいます。
さらに、これに加えて働くのが「ラベリング効果(Labeling Effect)」。一度「私は失敗した人間」「私は不器用」といったラベルを自分に貼ると、その思い込みが強化され、本来持っていた強みの“発芽のチャンス”すら奪ってしまうことがあるのです。
このようにして、実際には強みがあるにもかかわらず、「過去の失敗」という“脳内フィルター”によって見えなくなってしまっている可能性があります。
脳はネガティブな記憶をポジティブな記憶よりも強く記憶しやすく、注意もそちらに向きやすい性質がある。
・プレゼンで失敗した経験があり、「人前で話すのは向いていない」と思い込んでしまう
・入社当初うまく馴染めなかったことで、「コミュ力がない」と決めつけてしまう
・一度注意されたことで、「私は気が利かない人間」と自分にレッテルを貼ってしまう
・人の脳は失敗の記憶を優先的に残す性質がある(ネガティビティ・バイアス)
・一度の失敗で自分を「向いてない」と決めつけると、強みの芽が見えなくなる
・ラベルを外し、“何が合わなかったのか”を冷静に見れば強みは見えてくる





強みが分からないままでも、正直そんなに困ってるわけじゃない気がするんですよね



たしかに“今すぐ困る”って感じじゃないかもしれない。でもね、強みが分からないままにしてると、“本当はもっと自分らしく生きられた未来”を逃してしまうこともあるんだよ



えっ…未来にそんな影響があるんですか?



うん。だからこそ、“放置したらどうなるか”を一緒に見ていこうか
自分に合わない環境でずっとがんばり続けてしまう?



今の仕事もなんとなく続けてるんですけど…毎日“これでいいのかな?”って不安になることがあって…



うん、それって“違和感のサイン”かもしれないね。強みが分かってないと、“合ってない場所”に長くい続けちゃうことがあるんだ



たしかに、これが得意とも思ってないのに頑張ってる感じはあります



強みが分かれば、“自分に合った環境”を選ぶ指針になるんだよ
科学的な解説
自分の強みを理解していないと、自分にとって「向いている環境」と「向いていない環境」の区別がつかなくなります。これに関係するのが「自己効力感(Self-efficacy)」という心理学の概念です。これは“自分にはこれができる”という感覚のことで、これが高いほど、自分らしい選択やチャレンジがしやすくなることが分かっています。
しかし、強みが曖昧なままだと、「自分に向いていること」が見えずに、とりあえず選んだ場所や仕事、人間関係に長くとどまってしまいがちです。そうすると、本来の力が発揮できず、モチベーションも続きにくくなります。
さらに、心理学者セリグマンの「学習性無力感」の研究でも、自分の力で状況を変えられない経験が続くと、「どうせ自分には無理だ」と感じてしまい、行動を起こす意欲が低下することが示されています。つまり、強みが分からずに“合っていない場所”でがんばり続けることは、自信や活力の低下につながるというわけです。
自分はある目標を達成できるという感覚。強みが分かると、自己効力感が高まりやすい。
・自分の強みが分からず、同じ場所で努力しても効果がない。
・自分に合わない仕事を続けることでストレスが溜まりやすい。
・他人との比較ばかりで、モチベーションが下がりやすい。
・強みが分からないと、自分に合わない環境でも気づかずにとどまってしまう
・自己効力感が育たず、「できるかも」という感覚を持ちにくい
・合わない環境で頑張るほど、自信を失いやすくなる
“なんとなく不安”を抱えたまま人生が進む



やりたいことが分からないとか、自信がないっていうのも、強みがないからかもしれないですね…



そうだね。“自分には何があるのか分からない”って状態だと、将来の選択にも不安がついてまわるんだ



たしかに、選んだあとも“これでよかったのかな”ってずっとモヤモヤしてます



それって、“自分の軸が見えてない”からなんだよね。強みが分かると、その軸が育ってくるんだ
科学的な解説
「自分の強みが分からない」状態が続くと、「自分の判断に自信が持てない」ことが増えていきます。この背景には、心理学で言う「アイデンティティの拡散(Identity Diffusion)」という状態が関係しています。これは、自分の価値観・役割・長所が曖昧で、自分自身をどう定義すればいいか分からない状態を指します。
アイデンティティが確立されていないと、自分に合った目標や環境を選ぶ際に、確信が持てなくなります。そのため、「なんとなく選ぶ」「なんとなく不安になる」といった“モヤモヤした状態”が続きやすくなります。
また、脳の「内側前頭前野(ないそくぜんとうぜんや)」という領域は、自分自身について考える「自己参照」の機能を担っています。強みを理解し、自分という存在を明確にイメージできる人ほど、この領域が活性化し、目標設定や意思決定の精度が高まるといわれています。
つまり、自分の強みを知らないことは、「自己理解を支える脳の働き」にも影響し、不安やモヤモヤを助長してしまうということです。
自分の価値観や役割、長所が不明確で、「自分は何者か」が分からない状態。
・目標が曖昧で、行動しても不安がついてまわる。
・将来の選択に自信が持てず、常に不安を感じる。
・自分の軸がなく、モヤモヤした気持ちが続く。
・強みが分からないと、自分の選択に確信が持てず、不安がついてまわる
・アイデンティティが曖昧だと、将来像や方向性もブレやすくなる
・脳の「自己参照機能」が働かず、目標がぼやける原因にもなる
本来のチャンスを逃す?



最近、同僚が昇進したんですけど、“なんで自分じゃないんだろう…”って思っちゃって…



うん、その気持ちすごく分かる。でもね、案外、“自分では気づいてない強み”が相手にはアピールできてたってこともあるんだ



えっ…私にもあったのかな、そういうの



もちろんだよ。強みが分かっていて、自分の言葉で伝えられる人って、それだけで印象も評価も変わってくるからね
科学的な解説
自分の強みが分からず、それを表現できないままだと、評価やチャンスの機会を逃してしまうリスクがあります。これは「印象形成(Impression Formation)」という心理学の概念に関連しています。人は第一印象や日常の言動から、その人の性格や能力を推測しますが、自分自身で強みを理解し、それを適切に伝えることができないと、他者に魅力が伝わりづらくなります。
特にビジネスや人間関係では、「自己呈示(Self-Presentation)」が重要です。これは“自分をどのように他人に見せるか”という戦略のことで、強みを自覚している人は、自信を持ってその魅力をアピールできます。
また、脳の「側坐核(そくざかく)」は、報酬や期待と関連しており、「他者からのポジティブな評価」への期待が高まると活性化します。ところが、自分の強みに自信がない状態ではこの働きが鈍くなり、「評価されることへの期待」自体が低下し、結果的に行動や発言が控えめになってしまいます。
つまり、強みが分からないことで、「評価されるチャンスを自ら手放してしまう」構造になっているのです。
人が他人の情報をもとに「どんな人か」を判断する心理プロセス。強みが伝わらないと印象も弱くなる。
・面接で「自分の強みは?」と聞かれても曖昧な返答になってしまい、印象に残らない
・仲間内で「相談しやすい」と思われているのに本人は気づかず、頼られる機会を逃す
・自分の魅力に自信がないため、好きなことに踏み出す勇気が出ない
・強みを知らないと、自分の魅力を伝えることができず、評価のチャンスを逃しやすい
・自己呈示ができないと、印象が薄くなり、選ばれる場面で損をすることもある
・脳の報酬系も「自信がない=期待できない」と反応が鈍くなり、行動が控えめになりがち





強みを見つけたいと思っても、そもそも“私なんかにあるのかな…”って思っちゃうんです



うん、それってすごく自然な反応。でもね、もしかしたらその“思い込み”が、強みの存在にフタをしてるだけかもしれないよ



思い込み、ですか?



そう。ちょっとした視点のズレが、見えるはずの強みを“ないこと”にしちゃってることがあるんだ。一緒に整理していこう!
苦手を克服しないと強みとは言えない?
❌「苦手を克服してこそ価値がある。得意なことばかりしていてはダメ」
⭕「強みとは“努力しなくても伸びやすいところ”にこそある。苦手は補えばいい」



得意なことばかりじゃなくて、苦手も克服しないと“ちゃんとしてない”気がするんですよね…



うん、その感覚もよく分かる。でもね、“苦手を無理に頑張る”ことより、“得意なことを伸ばす”方が、結果的に成果も自信もつきやすいんだよ



そうなんですか?ずっと“弱点を直さなきゃ”って思ってました



苦手って“人に助けてもらえばいい場所”なんだ。強みは“がんばらなくても自然と伸びる場所”。そこを信じて大事にしていこう
科学的な解説
この思い込みは「欠点克服信仰」や「完璧主義的傾向」に基づいています。多くの人は、学生時代から“苦手を克服することが偉い”と教えられてきました。しかし、心理学や組織行動学の研究では、「強みを伸ばす人の方が、長期的に成果・幸福度・継続力が高い」と証明されています。
これは「ポジティブ心理学」の研究に基づく考え方で、「人は自分の得意分野にエネルギーを注いだとき、最も満たされ、能力が高まる」とされています。強みにフォーカスすることで脳の報酬系(側坐核)が活性化し、学習効率や創造性が高まるのです。
逆に、苦手なことにばかり時間を使うと「自己効力感」が低下し、脳のストレス系(扁桃体)が過剰に働きます。それが「自分はダメだ」「続かない」などの思考を引き起こす原因になります。
つまり、苦手は最低限でOK。強みを活かす方が、より自然に“自分らしさ”を発揮できる生き方になるのです。
苦手をなくすことが人間的成長の本質だと思い込み、強みを見逃してしまう思考パターン。
・人前で話すのが苦手だが、1対1の会話では深く信頼関係を築ける
・計画を立てるのが苦手だけど、瞬時の判断や感覚で動くのが得意
・数字管理が苦手なので他人に任せ、自分はアイデアや企画で貢献している
・苦手を克服しないとダメという思い込みは、自分を苦しめるだけ
・強みは“努力してないのにうまくいく場所”。そこにもっと注目すべき
・苦手は最低限でOK。他人と助け合いながら、“得意”で勝負する方が長く続く
好きなことに“強み”を感じられないワナ
❌「“好き”と“得意”は別。楽しんでるだけじゃ強みとは言えない」
⭕「“好きだから続けられた”ことが、強みを育てている」



イラスト描くのは好きだけど…楽しいだけで、特別上手いわけじゃないし、それって強みって言えるのかなって思っちゃいます



それ、実はめちゃくちゃもったいない思い込みだよ。好きっていう気持ちは、強みを育てるエネルギーだからね



でも“得意”とは違うような気がして…」



好きだからこそ“苦じゃなく続けてきたこと”って、無意識の中でスキルが伸びてる可能性めっちゃ高いんだよ
科学的な解説
この思い込みの背景には、「成果主義の内在化」と「外発的動機づけへの偏り」があります。社会では“結果を出せる人がすごい”という空気が強く、好きでやってること=遊び、評価されるスキル=数字で示せるもの、という偏った価値観が根付きがちです。
しかし、心理学では「内発的動機づけ」のほうが、継続的な学習や成長につながるとされており、これは「自己決定理論」でも明確に示されています。「好き」「夢中でやってしまう」といった気持ちで動いているとき、脳では「側坐核(そくざかく)」が活性化し、やる気・集中力・学習能力が高まるのです。
さらに、無理なく続けられた経験の中には、気づかぬうちに磨かれたスキルやパターンが多く含まれています。それが強みの“タネ”であり、他人と比べて特別に見えなくても、“あなただけが積み上げてきた力”になっているのです。
結果を出すことにばかり価値を感じ、「好き」や「継続」に価値を見出しにくくなる傾向。 |
・料理動画を見るのが好き→味覚・美的感覚・分析力
・推しのライブレポを書くのが好き→文章力・観察力・表現力
・カフェ巡りが趣味→情報収集・空間認識・比較分析力
・「好き=強みにならない」は誤解。好きこそ最強の“継続力”を生む源
・好きで続けていた行動の中に、無意識で育ったスキルが隠れている
・楽しみながら積み上げた経験は、他人には真似できない“あなたらしさ”になる
“明確な形”がないと強みじゃない?
❌ 「“強み”って資格とかスキルとか、はっきり目に見える形がないとダメ」
⭕「強みは“形”じゃなくて、“どんなときに自然と発揮されるか”で見つかるもの」



資格もないし、アピールできるスキルとかもなくて…これといって“強み”って言えるものがないんです



うん、それすごく多い悩み。でもね、強みって“肩書き”とか“資格”とかより、“無意識でやってること”や“自然と人にされる頼まれごと”に現れるんだよ



えっ…じゃあ、例えば“友達の相談をよく聞いてる”とかも?



うん、それも立派な強みのサイン。“形”より“流れ”を見つけることが大事なんだよ
科学的な解説
この思い込みは、「形式的達成信仰(Formal Achievement Bias)」という認知の偏りに基づいています。これは、「資格」「数字」「スキルの名称」など、“明文化された成果”にばかり価値を感じてしまい、“日常の行動や関わりの中で発揮されている力”を見逃す傾向のことです。
しかし、心理学では「ナラティブ・アイデンティティ(物語的自己)」という概念があり、私たちの強みは“過去のエピソードの中でどのように発揮されてきたか”という「ストーリー」の中にこそ表れます。つまり、“肩書きや資格”ではなく、「何をしているときに自然と輝いていたか?」の視点が強み発見にとって重要なのです。
また、脳科学的には、“意味のある経験”を思い出しているときに海馬と前頭前野が連携し、その時に感じた感情や感覚が“自分らしさ”として記憶されます。だからこそ、「無意識でやっている行動パターン」を丁寧に振り返ることが、資格やスキル以上に“リアルな強み”を教えてくれるのです。
目に見える形(資格・スキル)だけに価値を感じ、本来の強みを見落としてしまう思考バイアス。
・資格は持っていないが、気づくと人に頼られる「相談役」になっている
・特別なスキルはないが、職場でいつの間にか“雰囲気を和らげる存在”として頼りにされている
・数字に強くはないが、物事を整理してわかりやすく伝える力で人に感謝されることが多い
・強みは「形あるもの」より「無意識に発揮されている行動」に隠れている
・資格やスキルに縛られすぎると、本当の“自分らしさ”を見逃してしまう
・「どんなときに自分らしくいられるか?」という視点が、強みを見つける鍵になる


2️⃣-4️⃣&5️⃣ 解決策&アクションプラン



ここまで聞いてきて、自分にも強みがあるかもしれないって思えてきました。でも…どうやって見つけたらいいのか、正直わからなくて



うんうん、それめっちゃ自然な気持ちだよ。強みって、自分の中に“すでにある”ことも多いから、コツさえつかめればちゃんと見つかるよ



コツ…?



そう。じゃあこれから“自分の強みを見つける3つの方法”と、それを日常で試せるワークを一緒にやってみよう!
人からの意見で“ジョハリの窓”を開く?



自分では分からないからこそ、どうしたらいいか分からないんですよね



それなら、“他人に聞く”のが一番早いよ。実はね、心理学の“ジョハリの窓”っていう考え方でも、“人が気づいてるけど自分が気づいてない強み”って、ちゃんとあるんだよ



他人から見た“私”かぁ…ちょっと怖いけど興味あります



大丈夫。一言でいいから、“私の長所って何だと思う?”って聞くだけで、意外な答えが返ってくるよ
科学的な解説
「ジョハリの窓(Johari Window)」は、自己理解を深めるために有名な心理学モデルで、自分の認識と他者の認識を4つの領域に分けて考える理論です。その中でも特に注目すべきなのが、“盲点の窓”と呼ばれる領域。これは“他人からは見えているけれど、自分には気づけていない部分”のことを指します。
人は、自分が無意識で行っている行動や特性には気づきにくいため、自分の強みにも気づけないことが多くあります。一方で、他人から見ると「あの人って、いつも自然に●●してるな」と気づかれていることがあるのです。これは“他者視点からの自己理解”でしか得られない情報です。
さらに、研究でも「フィードバックを積極的に受ける人ほど、自己効力感や自己肯定感が高まりやすい」とされています。自分の内側に閉じこもって考えるだけでは限界があるため、まずは「他人の声を借りる」ことが、強み発見の第一歩となるのです。
自己理解を深めるための心理モデル。自分に見えていないけど他人からは見えている部分に強みが隠れている。
ワーク
自分の強みは、自分ひとりでは気づきにくいもの。そこで効果的なのが、他人の視点を借りて“見えない強み”を見つける3つのワークです。
①【シンプル質問ワーク】
身近な人に「私の長所って何?」と聞くことで、意外な強みの言葉が返ってきます。
②【エピソード記憶ワーク】
過去に褒められたり感謝された出来事を思い出し、強みの行動パターンを整理します。
③【ポジティブメッセージ収集ワーク】
日常のさりげない褒め言葉を集め、自分の“無意識の魅力”を発見する方法です。
この3つを組み合わせると、「言葉+行動+場面」で強みが立体的に見えてきます。
・「話しやすい」と言われる→信頼感や共感力の強み
・「いつも冷静」と言われる→判断力や安定感の強み
・「丁寧だね」と言われる→誠実さや注意力の強み
・自分が見えていない強みは、“他人からの視点”で見つかる
・フィードバックを受け取ることで、自己効力感や肯定感が育ちやすくなる
・みは“言葉+行動+場面”がセットになると、自分ごととして定着しやすい
過去の夢中を掘り返して見つける?



フィードバックって少し怖いけど…自分の中にもヒントがある気もしてて



いい視点だね!実は“夢中になってたこと”とか“つい続けてたこと”には、自然に強みが出てることが多いんだ



えっ…そんなのでも?



うん。“結果を出したかどうか”じゃなくて、“どれだけ無意識に続けられたか”が大事なんだよ
科学的な解説
「強み」は、“成果”や“特別な才能”の中だけにあるわけではありません。実は、過去の“夢中”になった体験や“好きで繰り返していたこと”の中に、その人ならではの特性が自然に現れていることが多くあります。
心理学ではこのような経験を「フロー体験(Flow State)」と呼びます。これは、自分の関心と能力がちょうどよく噛み合った時に起こる「集中+楽しさ+没頭」の状態です。人はこのフロー体験を通じてスキルや強みを自然と育てていきます。
また、脳科学的にも“好きなことに集中している時”は、脳の「側坐核」や「前頭前野」が活性化し、学習効率や創造性が高まるとされています。つまり、“努力と思わずに続けてきたこと”こそ、脳が自発的に強みとして伸ばしてきた領域とも言えるのです。
好きなことや得意なことに夢中になっている状態。強みが自然に出るタイミング。
ワーク
このワークでは、“努力と思わずにやってきた行動”の中から、強みのヒントを探します。
①夢中だったこと棚卸しワークでは、過去に没頭した体験を振り返り、自分の特性を発見します。
②“ついやってしまうこと”ワークでは、日常の無意識な行動から自然な強みを見つけます。
③“やってて疲れないこと”チェックワークでは、時間を忘れるくらい夢中になれる活動を元に、強みの傾向を分析します。
これらを組み合わせることで、自分では気づかなかった“好き”の中に眠る強みに出会えます。
・小さい頃から絵を描くのが好き→観察力・構成力・表現力が育っている
・日記を書いていた→感情の整理・言語化能力・内省力
・なぜか毎回「まとめ役」になる→統率力・判断力・状況把握能力
・「好きでやっていたこと」には、無意識で出ていた強みが現れやすい
・“成果”よりも“没頭できたかどうか”に注目することがカギ
・3種類のワークを通して、過去・今・無意識の行動から強みを掘り起こすことができる
できないことからあぶり出す?



強みを探すって言っても、得意なことが本当にない気がするんです…



うん、その気持ちもすごく分かる。でもね、“できないこと”とか“嫌なこと”から探してみると、逆に“あなたらしさ”が見えてきたりするんだよ



できないことから…ですか?



そう。“苦手”ってことは、実は“別の特性”がある証拠かもしれないんだ。そこから逆に強みが浮かび上がることも多いんだよ
科学的な解説
心理学では「コンプレックスからの補償行動」という考えがあります。これは、人が「できない」と感じることに対して、無意識に別の分野でバランスを取ろうとする心理的メカニズムのことです。たとえば、人前で話すのが苦手な人が、文章での表現が得意だったり、マルチタスクが苦手な人が、ひとつの作業にじっくり集中できるという強みを持っていたりします。
また、認知行動療法の中でも「認知のリフレーミング」という技法があります。これは、ある出来事や特性の“見方”を変えることで、意味づけが変わり、自信や前向きな感覚が生まれるという方法です。つまり、「苦手・不得意」というネガティブに見えるものは、裏を返せば「自分らしさ」や「独自の強み」を見つけるための“鏡”になるのです。
そして、脳科学でも、「失敗や困難を体験した人のほうが、前頭前野の“自己制御”や“自己洞察”に関する領域が発達しやすい」という研究があります。だからこそ、自分の苦手な領域に目を向けることは、成長と強みのヒントになるのです。
不得意なことを補うため不得意なことを補うために、他の分野で自然と力を伸ばす心の働き。
ワーク
このワークでは、“苦手”や“やりたくないこと”から逆に強みを見つけていきます。
①苦手なことを逆に見るワークでは、「だからこそ得意なこと」が浮かび上がります。
②やりたくない仕事・役割から探すワークでは、「自分らしい働き方」や「自然とやっている行動」が見えてきます。
③注意されたことリフレームワークでは、人からの指摘を“新しい視点”で捉え直すことで、強みに変える練習ができます。
どのワークも、“欠点ではなく可能性”に目を向ける視点を育ててくれます。
・人前で話すのが苦手 → 書くのが得意/深く考える力がある
・マルチタスクが苦手 → ひとつの作業に集中できる/丁寧さ
・指示されるのが苦手 → 自主性・主体性が強い
・「苦手」や「できないこと」は、強みを見つける“入り口”になる
・認知のリフレーミングで、ネガティブな印象をポジティブに変えられる
・“自分が避けていたもの”にこそ、実は伸びている力のヒントがある


2️⃣-6️⃣ 本当に変われるの?(変われる根拠)



ここまでやってみて、少しずつ考えが変わってきた気はするけど…やっぱり“自分が変われる”って信じ切れなくて



うん、それもすごく自然な気持ちだよ。人って、“今の自分”に慣れすぎちゃって、新しい自分をイメージしづらくなることがあるんだ



そうなんですよ…今までずっとこのままだったし



でもね、実は“強みの見つけ方”も“自己イメージの変え方”も、ちゃんと脳や心理の仕組みとして“変われるようにできてる”んだよ
脳は変化に対応するしくみがある?



でも私、これまで強みを見つけられなかったから、やっぱり向いてないのかなって思っちゃって…



いや、それは違うよ。実はね、脳は“使い方”によって変わるんだよ。“今まで見えなかった”のは、ただ意識が向いてなかっただけかも



意識…ですか?



うん。ちゃんと意識を向けて繰り返すことで、“強みを見つけやすい脳”に変えていける。脳は思ってるより柔らかいんだよ
科学的な解説
人は「変われない」と思い込んでしまいがちですが、実際の脳は“変化できる前提”で作られています。この仕組みのことを「神経可塑性(しんけいかそせい/Neuroplasticity)」と呼びます。これは、脳の神経回路が経験や学習、意識の向け方によって柔軟に組み替わる性質のことです。
例えば、今まで「自分には強みがない」と思っていた人も、「振り返る」「質問に答える」「他人の意見を聞く」といった行動を積み重ねることで、“自己理解”に関する神経回路が強化されていきます。そしてそれが習慣化すれば、自然と「自分の強みに意識が向きやすい脳」に変化していきます。
また、「メタ認知」という概念も変化のカギです。これは「自分の思考を客観的に見つめる力」のこと。強みを見つけようとする行為そのものが、このメタ認知能力を高め、自己成長の土台となります。
つまり、過去に気づけなかったことが、これからもずっと分からないというわけではありません。脳は“意識の向け方”でどんどん変化していく、成長型のシステムなんです。
脳は使われ方によって変化する性質がある。経験や意識の向け方で、思考のパターンも変えられる。
・自分に問いかける習慣をつけたことで、自分の考えを冷静に見られるようになった人
・ワークで過去を振り返る中で「そういえば続けてきたこと」が明確になり、強みとして再認識できたケース
・フィードバックをもらうたびに、自分への見方が少しずつ前向きに変わっていった人
・脳は「神経可塑性」という性質を持ち、意識の向け方で新しい回路が育つ
・自己理解に意識を向けるだけで、「強みに気づく脳」に変わっていける
・メタ認知(自分を客観視する力)も、強み発見を支える土台として育っていく
生まれつきじゃなく後から育てられる?



やっぱり強みって、“もともと持ってる才能”とか“目立つスキル”みたいなイメージがあって…



うん、そのイメージを持ってる人すごく多い。でも実は、強みって“あとから育つもの”でもあるんだよ



え…そうなんですか?



うん。好きとか、得意とか、小さな成功体験が積み重なって、だんだん“強み”に育っていく。生まれつきじゃないんだ
科学的な解説
強みというと、「もともとの才能」や「他人よりすごいこと」というイメージがあるかもしれません。でも実際には、心理学的にも脳科学的にも、強みは“後天的に育つ”スキルや特性であることが分かっています。
心理学の「スキル習得理論(Skill Acquisition Theory)」では、人が特定の分野で能力を発揮するようになるまでには、反復練習・内的動機・成功体験の積み重ねが重要だとされています。つまり、最初は“ちょっと得意かも?”というレベルのことでも、続けていくことで“強み”に変わっていくということです。
また「成長マインドセット(Growth Mindset)」という考え方では、人の能力は努力や学びによって伸びるという前提に立っています。この考えを持っている人は、失敗を「成長の過程」ととらえやすく、結果的に自分の強みを伸ばしていける可能性が高くなるのです。
強みとは、“最初からあるもの”ではなく、“意識と継続”によって“これから育てていくもの”という見方が、私たちを勇気づけてくれます。
能力は練習と経験によって育つという心理学理論。得意や強みは後からでも獲得可能。
・接客バイトで「感じがいい」と言われて自信がつき、コミュニケーションの強みに
・日記を続けていたことで、言語化力が自然と育ち、今では企画書や文章作成が得意に
・「ちょっと気になること」を深掘りしていたら、リサーチ力が周りより強くなっていた
・強みは才能だけじゃなく、小さな“得意”や“好き”を育てた結果できるもの
・継続や成功体験が“スキル”を“強み”に変えていくプロセスになる
・成長マインドセットを持つことで、失敗も強み形成の材料になると捉えられる
自分を変えた人たちは特別な人じゃない?



でもやっぱり…変われた人って、もともと自信があったり、前向きだったりする人なんじゃないかなって思っちゃいます



たしかに、そう見えるかもしれないよね。でもね、最初から自信があった人って、実は少数派なんだよ



えっ…そうなんですか?



うん。実際に変われた人って、“迷ってた人”“悩んでた人”が、小さなきっかけをきっかけに少しずつ動いていっただけなんだ。特別な才能より、“一歩”の方が大事なんだよ
科学的な解説
私たちはつい、「変われた人=特別な意志や才能を持っていた人」だと思いがちです。しかし、実際に多くの変化を経験した人たちは、“特別な人”ではなく、“迷いながらも行動を続けた人”です。
心理学でいう「トランスセオレティカル・モデル(変化の段階モデル)」では、人の変化には「無関心期 → 関心期 → 準備期 → 行動期 → 維持期」という5つのステップがあるとされています。つまり、すぐに行動できる人はほんの一部で、大半の人は「悩む時期」や「まだ動けない時期」を経て変化に向かっていきます。
さらに、変化を経験した人は「自己効力感」を徐々に育てています。これは、「できるかも」「続けられるかも」と思える感覚であり、小さな成功体験や他者からの支えによって高まっていきます。強みを見つけた人も同じで、最初は「自分には何もない」と思っていたけれど、誰かの言葉やワークを通して、少しずつ気づいていったのです。
大切なのは、“変われたかどうか”ではなく、“今、向き合おうとしていること”そのもの。それこそが、変化の第一歩です。
人は段階的に変わっていくという心理理論。最初は“まだ悩んでる状態”でOK。
・就活で「何もアピールできない」と思っていた人が、友達との関係性から「聞き上手」を強みに変えて自信をもてた
・バイトの初期で自信がなかった子が、「丁寧だね」と褒められたことをきっかけに、自分の強みを言語化できた
・自己分析を繰り返していく中で、「私にもこういう一面あるかも」と感じて、行動に移せるようになった人たち
・変われた人たちの多くは、最初は“自信がなかった人”や“悩んでいた人”
・変化には段階があり、「悩んでる状態」も大切なプロセスの一部
・小さなきっかけや成功体験の積み重ねが、変化の原動力になっていく


2️⃣-7️⃣ これを解決したらどうなる?



もし本当に強みが見つかったら、何か変わるのかな…? 今の自分が想像できなくて



うん、それも自然なことだよ。未来の自分って、今の自分とは全然違う考え方してたりするから、イメージしにくいんだよね



そうですよね。強みが見つかったら、何か変わるのかなって…



めちゃくちゃ変わるよ。強みが“分かってる人”って、“選べる人”になるんだ。自分に合った環境や行動を選ぶ感覚が変わってくるんだよ
自分の選択に自信が持てる?



なんかいつも、自分で決めたはずなのに“これでいいのかな”って不安になるんです



それ、強みが分からない状態の人にすごく多い感覚なんだよね。でも、自分の強みが見えてくると“私はこういう軸で動いてる”って感覚が持てるようになるよ



軸かぁ…それがあったら、もうちょっと安心して決められそう



うん、自分の特性を知ってるだけで、選ぶ時の“根拠”が生まれるから、迷いが減るんだよ
科学的な解説
自分の強みが見つかると、自己決定の力が高まり、迷いが減っていきます。
これは「自己決定理論(Self-Determination Theory)」と関係しています。
この理論では、人が本来の力を発揮するには「自律性・有能感・関係性」の3つが必要だとされており、強みの理解はこの「自律性」を支える核になります。自分の強み=「自分はどう動きたいか/どんな働き方・関わり方が得意か」を知ることになるので、進路・職場・人間関係の選択に迷いにくくなるんです。
さらに、脳の「前頭前野」は選択や判断に関わる部分で、“自分の価値観に沿った判断”を繰り返すことで、その神経回路が強化されていくことも分かっています。つまり、自分に合った選択をするほど「選ぶ力」が育つんです。
自分の選択に主体性を持てることが、人のモチベーションや満足感を高めるという理論。強みはその“選ぶ力”を支える軸になる。
・就職先を「条件」ではなく「自分の強みが活かせるかどうか」で選べるようになった
・SNS投稿や発信を「何が正解か」ではなく「自分の得意な表現で」迷わずできるようになった
・人からの誘いに流されず、「これは自分に合うか?」を基準に選べるようになった
・強みが見えると、自分の「行動の軸」がはっきりして迷いが減る
・「何が正解か?」ではなく、「自分に合ってるか?」で選べるようになる
・脳も“自分らしい判断”を繰り返すことで、選択の精度が自然と高まっていく
周りと比べるより自分の価値に集中?



つい周りと比べちゃって、“あの子はあれができるのに”って落ち込むことが多いんです…



わかるよ。でもね、強みが分かってくると、比べ方そのものが変わるんだ。“自分はこれがある”って思えると、他の人の強みを見ても“すごいな”で終わるようになるよ



たしかに、私には私の強みがあるって思えたら、ちょっと気がラクかも…



そうそう。強みがある人ほど、“自分の得意”に集中できて、他人と比べなくなるって、脳の仕組みにも理由があるんだよ
科学的な解説
強みが分かるようになると、「他人と自分の役割の違い」を理解できるようになります。これにより、「他人と比べて劣っている」という感覚が減り、「自分は自分」と受け止めやすくなるのです。これは**自己受容(Self-Acceptance)**が育っているサインでもあります。
また、脳科学的にも、人が他人と自分を比較して落ち込む時には、「扁桃体(へんとうたい)」という脳の不安を感じる部分が反応しやすくなります。しかし、強みに意識が向いているときには、「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれる脳の内省系が活性化され、「自分の価値や内面に意識が向く」状態になります。
つまり、強みに気づくことで「外に向かっていた注意(他人)」が、「自分の内面や価値」へと切り替わり、結果的に比較ストレスが減るんです。
自分のありのままを認める力。強みを理解することで「自分へのOK」が出しやすくなる。
・同僚のスキルに落ち込んでいたが、自分の聞き上手が評価されてから、人との比較が減った
・SNSの投稿で落ち込んでいたが、「自分にしかできない発信スタイル」に気づいて楽しくなった
・他人のスピードについていけないと悩んでいたが、「丁寧さ」を強みにして評価され、焦りが減った
・強みに集中することで、他人との比較が自然と減っていく
・自分の価値に目が向くことで、「焦り」や「劣等感」が小さくなる
・脳も「自分の価値」に意識が向くようになり、自己受容が高まる
自分に合った環境や人間関係を選べる?



今の職場や人間関係って、なんとなく流されて決めてきた感じで…自分に合ってるか分からなくて



うん、その感覚すごく大事だよ。強みが分かると、“自分に合う・合わない”の感度がめちゃくちゃ上がるんだ



たしかに、自分のことが分かれば、無理に合わせなくてもいい場所が見えてくるかも…



そうそう。強みって、ただのスキルじゃなくて、“心地よくいられる場所”を見つけるナビみたいなものなんだよ
科学的な解説
自分の強みが明確になると、「環境選び」の軸がはっきりします。これは心理学でいう「パーソン・エンバイロメント・フィット(Person-Environment Fit)」に関連しています。この理論では、“人の特性”と“環境の特性”が一致しているほど、ストレスが減り、パフォーマンスや満足感が高まるとされています。
つまり、自分の強み(=得意なスタイル、やりやすい関わり方)を理解していれば、それを活かせる場所を選べるようになり、無理のない働き方や付き合い方ができるということです。
また、脳の「報酬系(側坐核など)」も、“自分に合った環境”にいるときほど活性化します。これは、安心感ややる気、幸福感につながる神経ネットワークです。逆に、合わない環境にいると、脳のストレス反応(扁桃体)が過剰に働き、疲れやすくなります。
だからこそ、自分の強みを知って「選べるようになる」ことが、ストレスフリーな未来への第一歩になるんです。
自分の特性と環境が合っているほど、満足度や成果が高まりストレスが減るという心理学理論。
・「私はサポート型」と分かり、営業ではなく広報やバックオフィスを選んだら生き生きできた
・「1対1の関係が得意」と分かり、大人数ではなく個別対応の仕事に転職しストレスが激減
・「自分のペースを保ちたい」と気づき、リモート中心の働き方に変えて体調とメンタルが安定した
・強みが分かると「自分に合う環境・合わない環境」の見極めができるようになる
・心地よい関係や職場を“選ぶ側”に回れるようになる
・脳も“合う環境”にいる方が自然とやる気や安心感が高まるしくみになっている


2️⃣-9️⃣ 行動したけど成果を感じない時にくじけないためのコツ



ワークも頑張ったし、いろいろ振り返ってみたけど…正直、“これが強みだ”ってまだハッキリ分からなくて、ちょっと焦ってきました



うん、その気持ちもすごくよく分かるよ。でもね、“変化って静かに進んでる”ことも多いんだ。表に出てないだけで、内側ではちゃんと進んでるんだよ



そうなんですか…?なんか実感がないから、また“私ってダメかも”って思いそうで…



それも自然な反応。でも、そんな時にこそ持っておくといい“考え方の土台”があるんだよ
進んでる実感はあとからやってくる?



やっぱり、やってることに意味があるのか分からないと、モヤモヤしてきちゃって…



わかる。でもね、脳って“変化が習慣化されてから”じゃないと、気づかないことも多いんだよ。あとから“あ、いつの間にか変わってた”って感じることが多いんだ



そういうもんなんですね…じゃあ、今はまだ気づいてないだけかもってこと?



そうそう。芽が出る前の土の中で、ちゃんと育ってる最中ってことだよ
科学的な解説
人は「変わった実感がないと意味がない」と感じやすいですが、脳の変化は「認知的遅延(Cognitive Delay)」と呼ばれるように、行動のあとに“気づき”が生まれることが多いとされています。
特に新しい習慣や考え方は、最初は無意識に変化し始めていても、意識の上で気づくには時間差があります。これは脳の「前頭前野」と「海馬」が関係していて、繰り返しの経験が“意味づけ”として脳に定着するまでには数週間〜数ヶ月のタイムラグが生じるからです。
つまり、「今、何も変わってないように見えても、裏では神経回路が少しずつつながってきている」という状態。続けているだけで、ちゃんと未来の変化につながっているのです。
行動の変化と“気づき”のタイミングにはズレがある現象。脳の反応には時間差がある。
・毎日の記録を続けていたら、ふとした時に“前より迷わなくなってる”ことに気づいた
・自己分析をしていたら、ある日会話の中で「それ私の強みかも」と自然に言えるようになっていた
・行動を継続していたら、後輩に「それ、〇〇さんらしいですよね」と言われて“らしさ”に気づけた
・「気づかないだけで変化してる」可能性が高い
・脳は“あとから気づく”ようにできている(認知的遅延)
・小さな行動でも、続けていれば脳の中では確実に変化が進んでいる
比べるなら過去の自分?



他の人の進み具合とか見ると、“私は全然だな…”って落ち込んじゃいます



うん、その気持ちすごく分かる。でもね、比べるなら“他人”じゃなくて“昨日の自分”がいいよ



昨日の自分…か。それなら少しは、見方が変わるかもしれないですね



そうそう。他人は“結果”しか見えないけど、自分の“プロセス”は全部知ってるじゃん。それって実は、すごい財産なんだよ
科学的な解説
「他人と比べて落ち込む」ことは、心理学的には「社会的比較理論」によって説明されます。この理論では、人は自分の価値や成果を他人との比較で判断する傾向がありますが、他人の“見えている一部”と自分の“全部”を比べてしまうため、不公平な比較が生まれやすいんです。
このとき、脳内では扁桃体が活性化し、「不安」や「劣等感」が強くなり、自己肯定感が低下します。一方、「過去の自分との比較」は、自分の中の“変化”や“積み重ね”に目が向くため、脳の報酬系(特に側坐核)が刺激され、「できた!」「進んでるかも」という実感が湧きやすくなります。
この報酬感覚があると、ドーパミンが分泌され、モチベーションの維持にもつながります。つまり、「過去の自分」との比較は、くじけそうな時でも“ポジティブな循環”を生み出す科学的に有効な思考法なんです。
他人と自分を比べることで自己評価が左右される心理傾向。モチベ低下を招きやすい。
・他人のSNS投稿で焦っていたけど、「1ヶ月前の自分」と比べたら毎日行動できていることに気づけた
・面談で「まだ強みが分からない」と思っていたが、1ヶ月前はそもそも“考えてなかった”自分がいたと気づけた
・「この前よりはちゃんと振り返れてる」と思えたことで、行動をやめずに続けられた
・他人との比較は「結果」だけを見て落ち込みやすい
・「自分の変化」に意識を向けると、モチベーションが続きやすくなる
・脳も“昨日の自分と比べる”方がポジティブに反応するようにできている
小さな証拠を集める?



何回も“強みを見つけたい”って思って行動してるのに、やっぱり途中で“どうせ自分なんて”って気持ちが出てきちゃうんです…



うん…そう思っちゃうのも当然だよ。でもね、その“どうせ”っていう気持ちに勝つには、“小さな証拠”をちょっとずつ集めていくのがいちばん確実なんだよ



証拠…ですか?



うん。“やれてるじゃん”って自分で確認できるような行動や言葉を、少しずつ貯金していくイメージ。根拠があれば、“信じる力”もちゃんと育つんだよ
科学的な解説
人は「できる理由が見つからない」と、自分を信じるのが難しくなります。この時に役立つのが「セルフエフィカシー(自己効力感)」という概念です。これは、“自分にはできそうだ”と感じる力のことで、過去の成功体験・他人からの評価・感情のコントロールなどから少しずつ高まるとされています。
特に、過去の“小さな成功体験”は、もっとも影響力のある要素です。心理学的にも「積極的反すう(Positive Rumination)」と呼ばれる思考法があり、自分ができたことを繰り返し思い出すことで、自己肯定感や行動の意欲が高まることが分かっています。
脳の「前帯状皮質」や「側坐核」もこの“成功の記憶”に反応しやすく、それが自信につながる神経回路を強化します。だからこそ、すぐに成果が出なくても、「できた証拠」を意識的に見つけて記録することが、折れない力の育成に直結するんです。
「自分ならできる」と信じる力。過去の小さな成功が大きな支えになる。
・ワークを1週間続けた →「私は継続できる力がある」
・人に「ありがとう」と言われた →「誰かの役に立てている証拠」
・振り返りを1行でも書けた →「自分と向き合う意欲がある」
・自分を信じるには「小さなできた」の積み重ねが必要
・成果がなくても「できたこと」を記録しておくと、折れにくい心が育つ
・成功記録は、脳の自信回路を強化する“科学的な方法”でもある





「自分の強みが分からない」と悩むあなたへ。
その気持ちは、今の自分をもっとよく知りたいという、
内側からの小さな声。
それに気づいて、ちゃんと向き合おうとしている今のあなたは、
もうすでに“成長の一歩”を踏み出してるんだよ。
強みって、特別な才能じゃない。
自然とやってしまうこと、好きで続けてきたこと、
なんとなく人に喜ばれたこと。
そういう何気ない毎日の中に、ちゃんとあなたらしさが隠れてる。
だからこそ焦らなくて大丈夫。
答えはいつも、自分の中にあるから。
少しずつでも気づけたとき、きっと“自分の輪郭”がくっきりしてくるよ。
そしてもし一人じゃ見つけられないときは、
そのときは遠慮せず、頼ってね。
あなたが“自分で見つけられた”って思える日まで、ずっとそばにいるから。